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宮城の農林水産業の相続問題、農地・山林・漁業権について。

相続手続き

佐藤 智春

地域に根ざした資産の承継

東北・宮城の土地には、長い年月をかけて家族が築いてきた暮らしの歴史と、地域の営みが息づいています。名取や大崎の農業、登米や気仙沼の林業、石巻や南三陸の漁業などは、いずれも先祖代々受け継がれてきた地域の資産であり、家族の生活を支えてきた証といえるでしょう。

しかし、少子高齢化や後継者不足が進むなかで、こうした資産の相続は新たな課題となっています。事情は地域や家庭によって異なりますが、その背景には総じて「地域と家族のつながりをどのように守るか」という問題があります。農地には農地法、山林には森林法、漁業権には漁業法などが適用され、それぞれ異なる手続きや要件が定められています。登記・税務・行政手続きが複雑に絡み合うため、相続には専門的な知識が欠かせません。

特に、平野部・山間部・沿岸部すべてを有する宮城県では、地域特性によって相続の内容や難しさが大きく変わります。本記事では、農業・林業・漁業それぞれの相続課題と、知っておくべき制度やポイントなどをわかりやすく整理します。

出典元|農地法
出典元|森林法
出典元|漁業法

 


 

農業と相続

農地は、家族の生活を支える基盤であると同時に、地域の経済や食文化の根幹を担う大切な資産です。先祖代々受け継がれてきた土地には、家族の歴史や地域の営みが息づいており、その価値は単なる不動産以上の意味を持ちます。

しかし近年、少子高齢化や後継者不足、都市化の進行などによって、農地の維持・管理が難しくなるケースが増えています。相続に際しては、名義変更の手続きや利用目的の見直し、農地法の制限など、専門的な対応を求められる場面も少なくありません。

実態と課題
農地は宅地や建物と異なり、農地法により強く保護・制限されており、売買・貸付・転用には行政の許可または届出が必要です。よく見られる課題は以下のとおりです。

祖父母名義のまま登記が放置されている
相続人が複数で共有となり、利用も売却も進まない
転用許可が得られず宅地化できない
遠方の相続人が管理できず、耕作放棄地化している

放置が続くと農地が「所有者不明土地」となり、地域の土地利用や農業政策にも悪影響を及ぼします。

 


 

必要な手続き

相続登記(義務化)
2024年4月から相続登記が義務となり、「相続により所有権の取得を知った日から3年以内」の申請が必要です。怠ると10万円以下の過料対象になります。
出典元|法務省「相続登記義務化」

農業委員会への届出(農地法第3条の3)
農地を相続した場合は、「権利の取得を知った日からおおむね10か月以内」に農業委員会へ届出が必要です。届出を怠るとこちらも過料の対象です。
出典元|農地法第3条の3「農地又は採草放牧地についての権利取得の届出」

 


 

相続と制度
農地を相続する際に重要なのが「相続税の納税猶予の特例」です。一定の要件を満たせば、農地にかかる相続税の納付が猶予され、条件により免除される場合もあります。
出典元|国税庁「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」

主な要件
被相続人が死亡日まで農業を営んでいた
相続人が申告期限までに農業を開始・継続する
農地が申告期限までに遺産分割されている

免除されるケース
相続人が20年以上農業を継続した場合
相続人が死亡した場合 など

 


 

途中で農業をやめたり農地を転用・譲渡すると猶予は打ち切られます。制度の利用には継続管理や定期届出が必要であり、専門家のサポートが欠かせません。

みらいえ相続グループでは、農地の相続などに関するサポートも行っております。「土地を守ること」は「家族と地域を守ること」。早めの整理と専門家への相談が大切です。

関連記事|みらいえ相続グループの強み

 


 

みらいえ相続グループでは、東京・仙台を拠点に、相続の専門家が、対面やオンラインでのご相談にも対応しております。まずは、お気軽にご相談ください。

 


 

林業と相続

かつて地域の暮らしを支え、燃料や建材、資産としての役割を果たしてきた山林も、現代では管理の難しさが顕在化しています。相続が発生しても、「場所がわからない」「境界が不明」「管理に手が回らない」「税金だけがかかる」といった理由から、放置される山林が全国的に増加しています。

森林の荒廃は土砂災害などのリスクを高めるほか、地域の景観や環境にも影響を及ぼします。相続の場面では、登記簿や地籍調査の確認、共有者間の調整、固定資産税の見直しなど、丁寧な整理が欠かせません。

実態と課題
山林相続の大きな問題は、資産の所在が不明になりやすいこと、そして管理の負担が大きいことです。また、相続人が複数いると管理の担い手が決まらず、結果的に放置されることも多く、トラブルや負担の原因となっています。

地籍調査が未整備で、登記と現況が一致していない
相続人が複数で、誰も管理を引き受けない

 


 

必要な手続き

相続登記(義務化)
2024年4月から相続登記が義務となり、「相続により所有権の取得を知った日から3年以内」の申請が必要です。怠ると10万円以下の過料対象になります。
出典元|法務省「相続登記義務化」

森林の土地所有者届出(森林法第10条の7)
2011年改正により、山林を相続した場合は90日以内の届出が義務化されました。怠ると10万円以下の過料が科されます。
出典元|森林法第10条の7「森林の土地の所有者となつた旨の届出等」

 


 

相続と制度
被相続人が林業を営んでいた場合、「相続税の納税猶予の特例」を利用できる場合があります。
出典元|国税庁「山林を相続した場合の納税猶予の特例」

 


 

山林や空き家は放置すると「負債化」するリスクが高まります。しかし、適切に管理すれば地域資産として再生する可能性もあります。

みらいえ相続グループでは、相続専門の税理士など専門のチームが、登記や評価などをサポートしています。

関連記事|みらいえ相続が選ばれる理由

 


 

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水産業と相続

漁業権や共同漁業権など、水産業に関わる資産は単なる「財産」ではなく、海で生計を立てる人々にとっての「生活の権利」そのものです。これらは地域の漁協や行政との関係の中で維持・管理され、地域社会全体で共有されてきた大切な資源でもあります。

しかし、漁業従事者の高齢化や後継者不足、制度の複雑さなどから、近年は相続の難しさが増しています。漁業権の相続には、単に名義を引き継ぐだけでなく、漁協の承認や許可手続きなども必要となるため、専門知識を必要とします。

実態と課題
水産業の相続では、次のような課題が典型的に発生します。

相続人が漁業未経験で承継が認められない
漁協の組合員資格がなく、行政承認が得られない
共同名義の港湾土地や漁具置場が放置される
名義変更を怠り、漁業権が失効するおそれ

放置すれば、漁業権の失効・組合員資格の喪失・補助金申請不可など、家業だけでなく地域漁業全体に影響が及びます。

 


 

必要な手続き

漁協・行政への届出(漁業権の承継)
漁業権は物権ではなく行政許可として扱われるため、相続による承継には「遅滞なく」届出を行う必要があります。実務上は、相続発生から1〜2か月以内の届出が目安です。届出後は、漁協および知事(または市町村)による承認手続きが行われ、承継の可否が審査されます。
出典元|漁業法 第79条「漁業権の移転の制限」

行政の適格性審査
漁業権の承継が認められるには、行政・漁協による審査が行われます。

主な審査項目(一例)
漁業を継続する意思があるか
漁業経験・能力
漁協の組合員資格
過去の操業実績や法令遵守状況

不適格と判断された場合、漁業権の承継が否認され、譲渡や返還(放棄)が求められることがあります。

相続登記(不動産の場合は義務)
港湾周辺の土地・漁具置場など不動産は、他の資産と同じく相続登記が必要です。2024年4月から相続登記が義務となり、「相続により所有権の取得を知った日から3年以内」の申請が必要です。怠ると10万円以下の過料対象になります。
出典元|法務省「相続登記義務化」

 


 

相続と制度(漁業権の評価)
漁業権の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達163(漁業権の評価)」に基づいて行われます。この通達では、漁業権は営業権の評価の中に含めて取り扱うとされています。ただし、一般的な会社の営業権とは性質が異なるため、漁業協同組合などが持つ共同漁業権や定置漁業権などは、権利の内容や漁場の状況、これまでの漁獲実績などをもとに、個別に評価額を算定します。

評価要素は以下のとおりです。

過去3年の漁獲高
営業利益・利益率
保有する漁船の価額
漁具・共同利用施設の価額
権利の種類(定置・共同・区画など)

評価額が高額となる場合もあり、正確な帳簿・漁協資料の確認が必須です。
出典元|国税庁「財産評価基本通達163(漁業権の評価)」

名義変更を怠るリスク
漁業権の承継が未完了 → 課税上「営業権」と認められない可能性
行政側の承認がないまま操業 → 無許可扱いとなるおそれ
補助金・支援金の受給要件を満たせなくなる
水産業の場合、税務・行政手続きが密接に絡み、専門的な対応が求められます。

 


 

漁業権や港湾周辺の共同名義土地は、家族だけでなく地域全体で守るべき重要な資産です。承継手続きを怠れば漁業権の失効や組合員資格の喪失といった重大な問題につながることもあります。

みらいえ相続グループでは、漁業権承継・相続登記・相続税評価までサポートしています。大切な家業と地域の漁業を守るためにも、早めの整理と専門家への相談が安心につながります。

関連記事|相続専門税理士・佐藤智春とは?

 


 

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AIや比較サイト、国税OBの肩書きなどで、税理士を選んでいませんか?

相続の税理士選びは「どこに相談するか」がとても大切です。

最近では、ChatGPTなどのAI情報や税理士の比較サイトを参考に、相談先を決める方が増えています。また、国税出身・国税OBなどの肩書きに安心感を持つ方も少なくありません。

しかし、そうした情報や肩書きだけで判断してしまうのは非常に危険です。国税出身だからといって税務調査を避けられるわけではなく、特別なルートがあるわけでもありません。

だからこそ、ご自身の目で複数の事務所を比較し、しっかり納得したうえで税理士を選ぶことが大切です。みらいえ相続グループでは、ご契約前に丁寧なご説明を行い、お客様の不安や疑問にしっかり向き合うことを大切にしています。

 


 

地域の相続は専門家に相談

農地・山林・漁業権はいずれも、宮城の自然とともに歩んできた暮らしの証であり、家族や地域のつながりを象徴する大切な財産です。しかし、その相続には登記・税務・行政への届出など、多岐にわたる専門知識と慎重な対応が求められます。

みらいえ相続グループでは、税理士・行政書士など専門家が連携し、農地・山林・漁業権といった地域特有の相続案件にもワンストップで対応しています。登記・届出、納税猶予の活用、共有地や漁業権の整理など、分野を横断的にサポートいたします。一人で悩まず、どうぞ専門家へご相談ください。

 


 

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[監修]

佐藤 智春代表 税理士・行政書士

経歴:仙台大原簿記専門学校卒業後、宮城県で最年少税理士登録。20年以上の実務経験を持ち相続専門税理士として数多くの案件を手がける。(2024年相続税申告実績/222件) 相続専門税理士佐藤智春は税理士の日(2月23日)に産まれ、二次相続はもちろん、三次相続までサポートできます。多くの案件をこなしているからこそ三次相続まで見据えた遺産の分け方を提案しています。

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