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子どものいない夫婦の相続。おふたり様トラブルを防ぐ生前対策。

生前対策

佐藤 智春

夫婦だけの問題ではない相続

「子どもがいないから相続は簡単」とは限りません。むしろ、子どものいないご夫婦ほど相続が複雑になりやすく、親族とのトラブルに発展するケースも少なくありません。たとえば夫が亡くなった場合、妻がすべての財産を相続できると誤解されがちですが、実際には夫の両親や兄弟姉妹、場合によっては甥・姪にも法定相続分が生じます。夫婦だけで生活してきたつもりでも、相続の場面では思わぬ第三者が登場し、遺産分割協議や代償金の支払いに直面することもあります。

さらに、子どものいない夫婦は高齢期に介護や認知症といったリスクにも向き合わなければなりません。どちらかが判断能力を失えば、残された配偶者であっても財産を自由に動かせなくなる可能性があります。こうした事態を避けるには、遺言書の作成や生命保険の活用、生前贈与、家族信託や後見制度の検討といった事前の備えが欠かせません。

相続は「起きてから考える」ものではなく「元気なうちに準備する」ものです。この記事では、子どものいない夫婦だからこそ知っておきたい相続のルールと生前対策の方法を分かりやすく解説し、将来の不安を安心に変えるための具体的な手立てをご紹介します。

 


 

子なし夫婦の相続トラブル

子どものいない夫婦の相続は、一見すると相続人が少なくシンプルに見えるかもしれません。しかし実際には、配偶者だけでなく親や祖父母、兄弟姉妹などが相続人として関与するケースがあり、想定以上に複雑になることがあります。

その結果、残された配偶者が予期せぬ話し合いや金銭的な清算、住まいの確保といった課題に直面しやすい構造があります。さらに、疎遠な親族の登場や、相続人の認知症・所在不明といった問題が加わると、協議は長期化し、精神的にも経済的にも大きな負担となりかねません。

法定相続で押さえておきたいポイント
配偶者は常に相続人ですが、子どもがいない場合は、次のいずれかが配偶者とともに相続人になります。

父母・祖父母が存命
相続人は「配偶者+父母・祖父母」

父母・祖父母が他界し、兄弟姉妹が存命
相続人は「配偶者+兄弟姉妹」

父母・祖父母も、兄弟姉妹も他界
相続人は「配偶者+甥・姪」

代表的な法定相続分の目安
配偶者のみ:100%
配偶者+父母・祖父母:配偶者2/3、父母等1/3
配偶者+兄弟姉妹:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

遺言が存在しない場合には、相続人全員の合意による遺産分割協議を行う必要があります。特に、不動産のように金銭で分割することが難しい財産が中心となる場合には、代償金の支払いや不動産の売却方法をめぐって相続人間で対立が生じやすくなります。

 


 

典型的なトラブル例

自宅が分けにくい問題
遺産の主力が自宅のみの場合、配偶者は居住継続を希望し、他の相続人は換価や持分取得を希望しがちです。代償金の金額・原資・支払期限で紛糾し、最終的に売却に至ることもあります。

疎遠な親族の突然の関与
疎遠な親族が突然相続に関わり、法定相続分を主張することで、思いがけない感情的対立に発展することもあります。その結果、協議が長期化し、配偶者に大きな負担が生じるケースも少なくありません。

相続人の認知症・所在不明
協議が進まず、成年後見人の選任や所在調査が必要となり、時間と費用が増大します。

名義・共有の落とし穴
親からの相続で土地が兄弟と共有のままになっていると、売却・担保設定に全員の同意が必要で身動きが取れません。

事実婚・連れ子に関する誤解
事実婚には法定相続権がありません。連れ子は養子縁組をしていなければ相続権がありません。(遺言・遺贈での配慮は可能)

 


 

社会的背景とトラブルが増える理由
少子化・未婚化で「子どものいない夫婦」「おふたり様」が増加しています。
家族のつながりが希薄化し、連絡・協議の困難が常態化しています。
高齢化に伴い、相続人側の認知症や意思疎通の課題が増えています。
配偶者=全部もらえるという思い込みが、対策の先送りを招いています。

 


 

子どものいない夫婦の相続では、配偶者だけで相続が終わらないことが大きなリスクとなります。思わぬトラブルを避けるためにも、元気なうちに夫婦でよく話し合い、きちんとした生前対策をしておくことが重要です。

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みらいえ相続グループでは、東京・仙台を拠点に、相続の専門家が、対面やオンラインでのご相談にも対応しております。まずは、お気軽にご相談ください。

 


 

夫婦が取るべき生前対策の基本

相続トラブルは、生前のしっかりとした準備によって防ぐことができます。特に子どものいない夫婦の場合は、親族との思わぬ争いを避けるためにも、生前対策を活用して、配偶者に確実に財産を承継できる仕組みを整えておくことが重要です。

1. 最優先は「公正証書遺言」
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため形式的な不備により無効となるリスクが極めて低いという大きな特徴があります。さらに原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がなく、家庭裁判所での「検認手続き」も不要です。その結果、相続開始後はスムーズに遺言の内容が実現され、相続人同士のトラブル防止につながります。

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2. 生命保険の活用
生命保険は、相続発生直後から配偶者が自由に使える現金を確保できる点が最大の強みです。死亡保険金は原則として受取人の固有財産とされ、遺産分割協議の対象外となります。また、500万円×法定相続人の数まで相続税の非課税枠があり、税務面での効果も大きい制度です。受取人の名義を最新の状態に整えておくことで、安心して生活費や納税資金、葬儀費用に充てられます。

 


 

3. 計画的な生前贈与
生前贈与は、相続財産を前もって整理し、争いの芽を減らす方法として有効です。基礎控除110万円の範囲内で毎年行えば税負担を抑えられ、婚姻20年以上の夫婦であれば居住用不動産の贈与に最大2,000万円の特例も利用できます。ただし、現金・預貯金・金融資産の贈与の場合、名義だけの移転は否認リスクがあるため、実際の資金移動や管理実態を伴わせることが不可欠です。

 


 

4. 家族信託・任意後見・各種委任
認知症などで判断能力が低下すると資産が凍結される可能性があるため、事前の備えが欠かせません。家族信託を活用すれば、信頼できる受託者に財産管理を任せ、柔軟な承継設計が可能になります。さらに任意後見や各種委任契約を組み合わせておけば、発動前から死後に至るまで切れ目なく生活と財産を守る体制を整えられます。

 


 

生前対策は、専門家のアドバイスを受けながら制度を上手に活用することで、より確実にご夫婦の大切な資産を残すことができます。

みらいえ相続グループでは、ご夫婦の家族関係や資産構成に応じて、最適な生前対策をご提案しています。相続に関する不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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安心のための信託・後見制度

子どものいない夫婦の相続では「財産をどう承継するか」だけでなく「判断力が落ちたとき、誰がどう管理し、暮らしを支えるか」まで計画しておくことが肝心です。

ここでは、家族信託/任意後見/成年後見の、役割と使い分けについて解説します。

1. 家族信託(民事信託)
認知症などで判断能力が低下しても、資産を凍結させず計画的に管理・承継できる仕組みです。委託者(財産の持ち主)が信頼できる受託者に管理を任せ、配偶者や親族を受益者に設定できます。自宅の段階的承継や生活費への柔軟な活用に向いていますが、契約は判断能力があるうちに行い、税務・登記・運用ルールを明確にする必要があります。

 


 

2. 任意後見契約
将来、判断能力が低下したときに備えて、事前に代理人を指名できる制度です。財産管理や介護契約・施設入所などを、信頼できる受任者(親族や専門職など)に任せられます。公証役場で契約し、必要時に家庭裁判所の監督下で発効します。財産管理委任契約や死後事務委任契約などと組み合わせることで、発動前から死後まで切れ目のないサポート体制を整えられます。

 


 

3. 成年後見制度(法定後見)
すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人を選任する仕組みです。裁判所が関与するため透明性が高い一方、柔軟性に欠け、費用や手続きの負担も大きい点が課題です。実務上は、資産承継の骨格を家族信託で整え、不足部分を成年後見で補完する形が現実的です。信託・後見・委任契約を役割分担で組み合わせることで、資産と生活を途切れなく守ることができます。

 


 

これらの制度は、遺言や生命保険、生前贈与、配偶者居住権などと組み合わせることで、生活費や住まいを守りながら、相続の手続きもスムーズに進められる仕組みになります。

大切なのは、ご夫婦の家族関係や資産の状況に合わせて、信頼できる人に託し、安心できる体制を整えておくことです。将来の安心のために、早めの生前対策を検討してください。

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AIや比較サイト、国税OBの肩書きなどで、税理士を選んでいませんか?

相続の税理士選びは「どこに相談するか」がとても大切です。

最近では、ChatGPTなどのAI情報や税理士の比較サイトを参考に、相談先を決める方が増えています。また、国税出身・国税OBなどの肩書きに安心感を持つ方も少なくありません。

しかし、そうした情報や肩書きだけで判断してしまうのは非常に危険です。国税出身だからといって税務調査を避けられるわけではなく、特別なルートがあるわけでもありません。

だからこそ、ご自身の目で複数の事務所を比較し、しっかり納得したうえで税理士を選ぶことが大切です。みらいえ相続グループでは、ご契約前に丁寧なご説明を行い、お客様の不安や疑問にしっかり向き合うことを大切にしています。

 


 

生前対策で夫婦の未来を考える

子どものいない夫婦・おふたり様の相続では、配偶者が必ず相続人となるものの、両親や祖父母、兄弟姉妹、さらには甥や姪が相続に関わるケースも少なくありません。その結果、思わぬ第三者の関与によって生活の基盤が揺らぐ可能性があります。

みらいえ相続グループでは、これまでいただいた多くのご相談に基づき、遺言・信託・贈与・後見制度・不動産・税務をワンストップでサポートしてきました。相続に不安をお持ちの方も、何から始めればよいのかという段階の方も、どうぞお気軽にご相談ください。子どものいないご夫婦に必要な具体策を一緒に整理し、安心できる未来の準備をお手伝いします。

 


 

みらいえ相続グループでは、東京・仙台を拠点に、相続の専門家が、対面やオンラインでのご相談にも対応しております。まずは、お気軽にご相談ください。

 


 

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[監修]

佐藤 智春代表 税理士・行政書士

経歴:仙台大原簿記専門学校卒業後、宮城県で最年少税理士登録。20年以上の実務経験を持ち相続専門税理士として数多くの案件を手がける。(2024年相続税申告実績/222件) 相続専門税理士佐藤智春は税理士の日(2月23日)に産まれ、二次相続はもちろん、三次相続までサポートできます。多くの案件をこなしているからこそ三次相続まで見据えた遺産の分け方を提案しています。

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