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相続税申告は自分でできる?AI活用などの危険性と注意点。

相続税

佐藤 智春

申告書の作成と正しい申告の違い

相続が発生すると、葬儀や名義変更、遺産分割など、多くの手続きを短期間で進めなければなりません。相続税の申告が必要になった方の中には、「費用を抑えるため、自分で申告できないだろうか」「AIやインターネットを使えば、税理士に依頼しなくても申告書を作れるのではないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。

結論からいえば、相続税の申告書は、相続人自身で作成・提出することができます。国税庁は、申告書の様式や「相続税の申告要否判定コーナー」などを公開しており、相続税の申告書はe-Taxでも提出できます。相続税の基礎控除額は、次の計算式で求めます。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

しかし、相続税申告で難しいのは、申告書に数字を入力することではありません。財産を漏れなく把握し、その財産が実質的に誰に帰属するのかを見極め、土地や非上場株式などを適正に評価する必要があります。さらに、家族間のお金の動きを整理し、適用できる特例や税額軽減を正しく判断しなければなりません。

AIや申告ソフトは、入力された情報の整理や計算、書類作成には役立ちます。しかし、入力されていない財産を見つけたり、通帳の管理状況、過去の贈与、家族の生活実態などから財産の実質的な帰属を判断したりすることには限界があります。前提となる情報が間違っていれば、AIが正確な計算を行ったとしても、申告内容は正しくなりません。また、評価方法や適用できる特例を見落とすと、本来より多く納税してしまう可能性もあります。

この記事では、自分で申告できると考えやすいケースと、専門家に相談した方がよいケースなどを整理し、AIや申告ソフトを利用する際の注意点、専門家による確認が必要な理由を分かりやすく解説します。

出典元|国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
出典元|国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
出典元|国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」
出典元|国税庁「相続税e-Tax特設サイト」

 


 

相続税申告は自分でできる?

相続税申告は、相続関係や財産の内容が明確で、必要書類をそろえ、財産の評価や帰属を適切に判断できれば、相続人が自分で申告することも可能です。

ただし、「財産は預金と自宅だけだから簡単」「基礎控除額を少し超えるだけだから大丈夫」と安易に考えることは危険です。財産の種類が少なくても、自宅の土地評価、過去の贈与、家族名義の預金、生命保険金、借入金、遺産分割の内容などによって、申告の難しさは大きく変わります。

自分で申告できると考えがちなケース

相続関係や財産の内容が比較的分かりやすい場合には、「税理士に依頼せず、自分で申告できるのではないか」と考える方もいるでしょう。例えば、次のようなケースです。

法定相続人が明確である
相続人同士に争いがない
財産の大部分が、被相続人本人名義の預貯金や上場株式である
相続税の計算に影響する生前贈与や、不自然な資金移動がない
家族名義の預金や不明な貸付金がない
土地や非上場株式など、評価の難しい財産がない
検討すべき特例や税額軽減が明確である

ただし、これらの条件に当てはまっていても、申告内容が単純とは限りません。預貯金や不動産だけでなく、生命保険金、死亡退職金、貸付金、暗号資産なども含め、相続税の対象となる財産と控除できる債務を漏れなく調査する必要があります。生命保険金や死亡退職金については、契約内容や受取人などにより取扱いが異なり、一定の非課税限度額が設けられている場合もあります。

出典元|国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」

 


 

申告不要と納税額ゼロの違い

計算上の納税額がゼロでも、申告手続きが必要になる場合があります。例えば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用した結果、納税額がゼロになる場合でも、原則として相続税申告書と必要書類の提出が必要です。そのため、Web上の簡易計算で「納税額ゼロ」と表示されても、申告が不要とは限りません。

また、遺産分割がまとまっていなくても、相続税の申告期限は自動的には延長されません。期限までに分割が終わらない場合は、未分割の財産を、民法に規定する相続分などに従って取得したものとして申告と納税を行います。未分割の財産については、当初の申告では原則として配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できません。

出典元|国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
出典元|国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」

 


 

10か月の期限は思っているより短い

「税金が出なさそうだから、後で考えよう」と資料収集を先送りすると、期限直前になって土地の評価や過去の贈与が問題となり、十分な検討時間を確保できなくなることがあります。相続税の申告と納税の期限は通常、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割や資料収集に時間がかかっても、原則として期限は変わりません。この間に、主に次の作業を進めます。

戸籍などを収集し、相続人を確定する
相続財産と債務を調査する
土地や株式などの財産を評価する
遺産分割について話し合う
申告書を作成する
納税資金を準備する
期限内に申告と納税を行う

葬儀や名義変更など、ほかの手続きと並行して進める必要があるため、申告の検討に使える期間は想像以上に短くなります。

出典元|国税庁「No.4202 相続税の申告のために必要な準備」
出典元|国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

 


 

AIや申告ソフトの強さと弱さ

AIを活用した相続税ソフトやWeb申告サービスは、画面上の質問に答えることで必要項目を整理し、税額計算や申告書作成を支援します。計算ミスや転記ミスを減らし、作業時間を短縮できることは大きな利点です。一方で、計算結果は、利用者が入力した情報に左右されます。

例えば、次のような質問が表示されたとします。

「家族名義ですが、実際には亡くなった父が管理していた預金はありますか」

利用者が「子どもの名義だから、子どもの財産だろう」と考えて「ない」と回答すれば、ソフトはその前提で計算します。しかし、家族名義の預金が誰の財産に当たるかは、口座名義だけでは判断できません。

実際には、預金の原資や通帳・印鑑の保管者、入出金や定期預金の手続きを行っていた人、名義人の認識、贈与についての双方の合意、名義人が自由に使用できたかなどを総合的に確認する必要があります。AIがこうした管理状況や家族間の事情を自ら調査し、入力内容の誤りを修正してくれるわけではありません。

 


 

相続税申告で重要なのは、申告書を作成できるかどうかだけではありません。財産の範囲や評価、適用できる特例を正しく判断し、「なぜこの申告内容になるのか」を資料と事実に基づいて説明できることが大切です。判断に迷う財産や資金の動きがある場合は、申告書を作り始める前に専門家へ相談することをおすすめします。

みらいえ相続グループでは、相続を専門とする税理士を中心に、行政書士法人や相続不動産に精通した不動産会社が連携し、相続に関する手続きを総合的にサポートしています。ご不明な点やご不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。

関連ページ|みらいえ相続税理士法人

 


 

みらいえ相続グループでは、東京・仙台を拠点に、相続の専門家が、対面やオンラインでのご相談にも対応しております。まずは、お気軽にご相談ください。

 


 

AIはわからない生活と財産の実態

相続税申告では、口座名義だけで財産の所有者を判断できないことがあります。代表例が、一般に「名義預金」と呼ばれるものです。AIは、入力された名義や金額を整理し、計算することができます。

しかし、誰のお金を原資とし、誰が管理し、名義人が自由に使えたのかまでは、入力された情報だけでは判断できません。財産の実態を確認するには、通帳や印鑑、取引履歴、保管状況、家族間のやり取りなどを総合的に確認する必要があります。

名義だけでは判断できない財産

例えば、父のお金を子ども名義の口座に預け、通帳や印鑑を父が保管し、入出金も父が行っていた場合、名義は子どもでも、実際には父の財産と判断される可能性があります。財産の帰属を判断するときは、口座名義だけでなく、次のような事情を確認します。

資金の出どころ
贈与する側の意思
贈与を受ける側の意思
通帳や印鑑の管理状況
預金の管理・運用状況
名義人が自由に処分できたか
預金から生じる利益を誰が受けていたか

一方、贈与について双方の合意があり、名義人本人が通帳や印鑑を管理し、自由に預金を使用できる状態だった場合には、名義人の財産と判断される可能性があります。国税不服審判所の公表裁決でも、預金の名義だけでなく、原資を負担した人、預金の管理・運用状況、贈与の事実の有無などを総合的に考慮して、財産の帰属を判断する考え方が示されています。

出典元|国税不服審判所「平成27年10月2日裁決」

 


 

大切なのは実際の管理状況

口座の名義や残高以外にも、次のような情報が、財産の管理者を判断する手がかりになります。

家族全員の通帳が同じ場所に保管されていた
複数の通帳を同じ人物が管理していた
複数口座で同じ届出印が使われていた
定期預金の申込書や更新書類を名義人以外が記入していた
キャッシュカードを名義人以外が持っていた
暗証番号を特定の家族だけが把握していた
入出金場所が名義人の生活圏と一致していなかった

例えば、東京に住む子どもの名義口座で、仙台周辺から入出金が繰り返されていた場合には、実際に誰が口座を操作していたのかを確認する必要があります。また、亡くなる直前に届出印や連絡先が変更されていれば、誰が、どのような目的で変更したのかを時系列で整理しなければなりません。

これらは、それだけで財産の帰属を決定する証拠になるとは限りません。しかし、ほかの資料や家族の説明と併せて、実際の管理状況を判断する重要な手がかりになります。AIに残高や名義だけを入力しても、このような背景事情までは把握できません。

 


 

お金の移動と財産の所有権の移動の違い

口座間でお金が移動しても、必ずしも贈与や貸付けが成立したとは限りません。例えば、妻名義の口座に一時的に入金されたお金を、夫の指示で夫名義の口座へ移した場合、通帳上は妻から夫への送金に見えます。しかし、そのお金を妻が自由に使用できず、夫の指示に従って一時的に預かっていただけであれば、実質的な所有者は当初から夫だった可能性があります。

反対に、妻が自分の財産を夫へ渡したのであれば、贈与や貸付けなど、別の法律関係を検討する必要があります。判断するためには、入金の理由、契約関係、資金の原資、誰が管理し、誰が自由に使用できたのかを確認しなければなりません。通帳上のお金の動きだけで、贈与や貸付けと決めつけないことが重要です。

 


 

税務調査で確認される暮らしとの矛盾

税務調査では、申告書に記載された数字だけでなく、亡くなった方の収入や資産規模、生活状況、お金の動きに不自然な点がないかも確認されます。例えば、収入や資産規模に比べて申告された預金が少ない場合や、亡くなる前に多額の出金があるものの使い道が分からない場合、本人の預金が減る一方で家族名義の資産が増えている場合などです。また、病気や入院をきっかけに預金の管理方法が変わっていたり、高額な資産を所有していた形跡があるにもかかわらず、申告書に記載されていなかったりする場合も、詳しく確認される可能性があります。

税務調査では、通帳や契約書などの資料だけでなく、資金移動の理由や、家族がその財産をどのように認識していたかについて質問されることもあります。そのため、申告前に関係資料を整理し、財産や資金移動の経緯を説明できるようにしておくことが重要です。

 


 

生成AIへ個人情報を入力する危険性

相続税の相談では、氏名や住所、家族関係、預金残高、不動産、生命保険、戸籍、遺産分割の内容など、重要な個人情報を扱います。生成AIに入力した情報の保存期間や学習への利用の有無は、サービスや契約内容、利用者の設定によって異なるため、取扱いを確認できない場合は、通帳や申告書、戸籍、遺産分割協議書などをそのまま入力しない方が安全です。

生成AIを利用する際は、入力内容が学習に利用されるか、情報が保存されるか、その期間や目的が明示されているかを確認しましょう。また、氏名や口座番号など、個人を特定できる情報は削除・匿名化することが大切です。個人情報保護委員会も、入力情報が学習に利用される可能性や、回答に不正確な内容が含まれるリスクについて注意を呼びかけています。

出典元|個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」

 


 

相続税申告でAIが見落としやすいのは、生活の中に埋もれた事実です。財産の帰属は名義や残高だけで決まるものではなく、通帳の管理状況や資金の出どころ、家族間のやり取りなどを総合的に確認する必要があります。こうした実態を確認しないまま申告すると、財産の申告漏れによって加算税や延滞税が生じる一方、本来は相続財産ではないものまで申告し、税金を払い過ぎるおそれもあります。

申告漏れと過大な納税の両方を防ぐためには、資料と事実に基づき、財産の帰属や税額を正しく判断する専門家の視点が欠かせません。名義預金や過去の資金移動に不安がある方は、財産の実態を丁寧に確認する、みらいえ相続グループへご相談ください。

関連ページ|みらいえ相続グループの強み

 


 

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税務署もAIを使う時代に大切な確認

納税者側でAIや電子申告の利用が広がる一方、国税当局もAIやデータ分析を税務行政に活用しています。一方で、自分で作成した申告書が電子的に受理されたからといって、申告内容が正しいと認められたわけではありません。入力や計算にエラーがなくても、財産の申告漏れや評価方法、実際の所有者などについて、後から確認される可能性があります。

国税庁もAI・データ分析を活用

国税庁は、申告漏れや不正の可能性が高い事案を見つけるため、AIやデータ分析を活用しています。令和6事務年度の相続税調査では、実地調査9,512件のうち7,826件で申告漏れなどが確認され、追徴税額は824億円でした。ただし、これは相続税申告全体の82.3%に誤りがあったという意味ではなく、申告漏れなどが疑われる事案を中心に調査した結果です。また、文書や電話、来署依頼などによる確認も行われています。

国税庁は、2026年9月24日のシステム更改に伴い、紙で提出された申告書などのAI-OCRによるデータ化も進める予定です。もっとも、AIは確認すべき事案を抽出するための手段であり、申告内容や財産の帰属が適正かどうかは、最終的に職員が資料や事実関係をもとに判断します。

出典元|国税庁「国税庁におけるAIの活用」
出典元|国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」
出典元|e-Tax「国税システムの更改に伴うe-Tax仕様書等の情報提供について」

 


 

相続税申告に重要なのは、専門家による検証

AIや申告ソフトで作成した申告書は、計算が合っていても、財産の見落としや評価方法、財産の帰属に関する誤りまで確認できるとは限りません。特に、名義預金、過去の贈与、家族間の資金移動などは、完成した申告書だけを見ても把握しにくい情報です。

専門家は、通帳や取引履歴、不動産の登記事項や利用状況、生命保険や退職金、贈与に関する資料、家族間の資金移動、財産の管理状況、亡くなる前後の生活状況などを総合的に確認します。そのうえで、申告する財産の範囲や評価方法、帰属判断の根拠を整理するため、税務署から質問を受けた場合にも、申告内容を説明しやすくなります。

 


 

AIやWeb情報は、制度を調べたり、資料を整理したりするうえで役立ちます。しかし、一般的な回答を個別の相続にそのまま当てはめることはできません。また、税務署のAI活用が進んでも、最終的に重要となるのは、申告内容を資料と事実に基づいて説明できるかどうかです。

完成した申告書の数字だけでなく、その判断に至った経緯や根拠まで整理しておくことが、税務上のリスクを抑えることにつながります。みらいえ相続グループでは、相続を専門とする税理士をはじめ、行政書士や不動産の専門家が連携し、個々の事情を踏まえた申告内容の検証から、税務署による確認への備えまで総合的にサポートしています。相続税申告にご不明な点やご不安がある方は、申告書を作成する前に、お早めにご相談ください。

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AIや比較サイト、国税OBの肩書きなどで、税理士を選んでいませんか?

相続の税理士選びは「どこに相談するか」がとても大切です。

最近では、ChatGPTなどのAI情報や税理士の比較サイトを参考に、相談先を決める方が増えています。また、国税出身・国税OBなどの肩書きに安心感を持つ方も少なくありません。

しかし、そうした情報や肩書きだけで判断してしまうのは非常に危険です。国税出身だからといって税務調査を避けられるわけではなく、特別なルートがあるわけでもありません。

だからこそ、ご自身の目で複数の事務所を比較し、しっかり納得したうえで税理士を選ぶことが大切です。みらいえ相続グループでは、ご契約前に丁寧なご説明を行い、お客様の不安や疑問にしっかり向き合うことを大切にしています。

 


 

AIに頼らず、早めに専門家へ相談を

相続税申告は、財産を一覧にして税額を計算するだけの手続きではありません。通帳や契約書、取引履歴、家族の生活状況などを確認し、財産が実質的に誰のものだったのかを判断する必要があります。AIや申告ソフトは、情報整理や計算、書類作成には役立ちますが、入力されていない財産や、家族間の資金移動、過去の贈与の実態まで正しく見極めることには限界があります。

また、完成した申告書だけを確認する「チェックだけ」の依頼では、名義預金や財産の帰属に関する問題を見落とす可能性もあります。家族名義の預金、不動産、非上場株式、生前贈与、高額な資金移動などがある場合は、財産を調べる段階から専門家へ相談することが大切です。

みらいえ相続グループでは、相続税申告をはじめ、遺産整理や不動産に関する問題まで総合的にサポートしています。相続に関するご不明点やご不安がございましたら、お気軽にご相談ください。

 


 

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[監修]

佐藤 智春代表 税理士・行政書士

経歴:仙台大原簿記専門学校卒業後、宮城県で最年少税理士登録。20年以上の実務経験を持ち相続専門税理士として数多くの案件を手がける。(2025年相続税申告実績/184件) 相続専門税理士佐藤智春は税理士の日(2月23日)に産まれ、二次相続はもちろん、三次相続までサポートできます。多くの案件をこなしているからこそ三次相続まで見据えた遺産の分け方を提案しています。

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